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title: 3-1 プロジェクトの始め方 | g0v シビックテックプロジェクトとコミュニティの手引き|g0v Civic Tech Project & Community Handbook
tags: jothon, NDI
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# 3-1 プロジェクトの立ち上げ|g0v シビックテックプロジェクトとコミュニティの手引き|g0v Civic Tech Project & Community Handbook
### Chapter 3: プロジェクトの立ち上げ
## 3-1 プロジェクトの立ち上げ
### 一、コミュニティにおけるプロジェクトの開発段階とその評価
このフレームワーク図を確認することで、プロジェクトの異なる開発段階および異なるタイプのプロジェクト貢献者にとって直面する共通の課題を整理し、さらに解決策を評価・検討します。

> [関連対策の収集記録](https://g0v.hackmd.io/@jothon/keng/https%3A%2F%2Fg0v.hackmd.io%2FRBw75TiqReyPd4XBEsnlHw%3Fview%23%25E6%25B4%25BB%25E5%258B%2595%25E6%2588%2590%25E6%259E%259C%25E6%2595%25B4%25E7%2590%2586%25E5%25B7%25A5%25E4%25BD%259C%25E5%258D%2580)
### 二、:book: 企画書のテンプレート、コンパクト版!
1. 理由(WHY)
(なぜこのプロジェクトを立ち上げたいのか? どのような問題を解決したいのか? という背景情報)
2. ユーザー想定 (WHO)
(完成したものは誰に、どういった状況で、どのように使われるのか? ユーザーのニーズや動機は?)
3. 問題を解決する方法(HOW)
(どのように問題を解決する予定ですか? 上記の使用状況を満たすために完成品にはどのような機能が必要ですか?)
4. あなたは今どんな困難に直面していますか?段階的な目標は?
5. 現在、どのような協力者を募集する予定ですか?
- [ ] NeedsProjectManager: 【必須】プロジェクトの青写真を開発し、インターフェイスを運用できるようにするPMが必要
- [ ] NeedsProjectCoordinator: 【必須】プロジェクト参加者をつなぐプロジェクトコーディネーターが必要
- [ ] NeedsWriter: コピーライティングが必要(基本情報の作成、プロジェクトの報告など)
- [ ] NeedsDesigner: インターフェースのデザインが必要
- [ ] NeedsData: データが必要(検索、クリーニング)
- [ ] NeedsTech: 技術サポートが必要(プログラム、Webサイトなど)
- [ ] NeedsProcess: 作業プロセスの設計に支援が必要
- [ ] NeedsTalkingToRealperson: 誰かのサポートや外部機関との連携が必要
6. 予定しているスケジュールは?
### 三、スタート段階
1. プロジェクトの独自性は?
(あなたの方法でこの問題が解決できる理由)
2. 既存の類似プロジェクト
(それをそのまま使えるのか? それとも不足点があるのか? 海外に参考にできるプロジェクトはあるか?)
3. 応用できる関連プロジェクト/技術
(何かのプロジェクトから派生/何かのプロジェクトで接続されたAPIなど)
4. ライセンス方法
(プログラムのMIT、BSD、文章のクリエイティブ・コモンズなど)
5. 利用するデータ
(使用予定のデータ、それぞれのライセンス)
6. プロジェクトの現状
(構想段階/企画段階/試作段階/実装済み)
7. プロジェクトの発展可能性
(将来的にどのような応用可能性があるか? どのような協業相手がいるか?)
8. プロジェクトの目標、対象者、独自性を明確にするために、この文型を使用して表現してみましょう。
「______が直面する______の困難を解決するために、私のプロジェクトは______を達成できる______を提供します。」
9. プロジェクトコミュニティを形成する
### 四、プロジェクトの目標達成、発展、再開、再現
#### 🔶 プロジェクトの目標達成
##### 1. プロジェクトの終了
「マスクマップ」プロジェクトのように、現在の社会の突発的なニーズに対応することを目的としたプロジェクトもあります。問題が解決された場合、または存在しなくなった場合、プロジェクトは中止されることがあります。
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界中に広がり始め、人々が医療用マスクの販売店情報をリアルタイムで入手できるようにするために、g0vの貢献者参加者で「好想工作室」のエンジニアが「コンビニにおけるマスクの販売情報マップ」を開発しました。その後、当時デジタル担当大臣だったg0vのオードリー・タンのサポートにより、政府は薬局の医療用マスクのリアルタイムな在庫データを公開し、「薬局の医療用マスクマップ」を開発しました。マスクの生産率、在庫、流通政策が需要を十分に満たすようになり、これらのマスクマップは必要なくなり、プロジェクトの目標を達成して完了しました。
##### 2. 当初の目標が達成され、新しい任務を開始
プロジェクトが当初の目標を達成した場合、プロジェクトを終了するだけでなく、次なる段階のミッションへと発展することもあります。「政治献金のオープン化プロジェクト」プロジェクトを例に挙げましょう。
2014年のひまわり学生運動の後、g0vのRonnyは、監察院から持ち出すことができない紙の政治寄付データをデジタル化し、一般の人々が分析できるようにデジタル データを公開する「政治献金のオープン化プロジェクト」を立ち上げました。これにより、政府が最終的に2017年に法律を改正し、2019年に「政治献金公開リファレンスプラットフォーム」を正式に発足させたことで、プロジェクトは目標を達成しました。しかしながら、法が改正されて情報が公開されても、現行の規定では依然として候補者の資金の流れを完全に把握できず、多額の寄付が候補者の政策の偏りにつながる可能性がありました。そこで2023年にこのプロジェクトは、より健全な民主主義と選挙制度を実現するために、法改正をさらに推進し、選挙前に国民に大規模な企業寄付を発表するという新たな目標を立ち上げました。
#### 🔶 プロジェクトの進化
##### 1. プロジェクト目標の範囲を拡大する
特定のプロジェクトのコラボレーションの過程で、他にも同様のニーズを持ち、同じモデルを使用して解決できる社会問題を発見したり着想することで、より広域なプロジェクトの目標を策定することもあります。

> Image from screenshot of the project presentation ( https://docs.google.com/presentation/d/1qcCedWc-OmnSJPY3F5eDg7wzbteSclcU/edit#slide=id.p5 )
たとえば、前述した「畫文好譯圖卡 InkRosetta」プロジェクトは、病院で働くエンジニアである Teemoによって始められました。彼はコロナ禍で、政府が提供する政策告知用のバナーが翻訳しにくいことに気づきました。外国人(特に移民労働者)や障害者(視覚障害者など)など、情報格差のある社会的弱者が利用することのできるデジタル翻訳カードを制作し、医師と患者間の情報格差やコミュニケーションの問題を軽減したいと考えました。このプロジェクトの開発過程で、Teemoはデジタル翻訳カードが、地域の薬局やNGO、さまざまな最前線の現場、New Southbound(台湾政府が政策として友好関係に取り組む東南アジア、南アジア、オーストラリア諸国など18ヶ国)への旅行者など、台湾華語を母国語としない人々が多数集まる場所でも使用できることを発見しました。そこで、デジタル翻訳カードが医療機関だけでなく、他の場所や同じニーズを持つ人たちにも導入できるように広めていこうと目標を再設定しました。
##### 2. 新しいミッションを増やしたり、サブプロジェクトを開始する
時代の変化に対応したり、プロジェクトのコラボレーションで発見された新しい問題を解決するために、プロジェクトは新たなミッションや目標を同時に進めることもあります。
近年、AIデジタルツールの導入が進んでおり、その機能は多岐にわたります。「Cofacts 真的假的」プロジェクトでは、AIデジタルコラボレーションツールを活用して情報を整理し、人的コストを削減したいと考えており、現在AIトレーニングに精通した仲間を募集し、より多くのコラボレーション方法の可能性について話し合おうとしています。
また、「Disfactory」プロジェクトに関しては、g0vで共同開発した匿名で通報できる「[農地違反工場通報システム](https://disfactory.tw/)」に加え、2022年にローンチした「[大家來找廠](https://spot.disfactory.tw/)(皆で工場を探そう、といった意味)」では、ゲーミフィケーションの手法で市民たちが衛星航空写真を比較できるようにしたことで、受動的な収集を主体的な行動に変え、約8,000人の参加者からの識別データを獲得しました。
#### 🔶 プロジェクトの再開
プロジェクトの再開には、以前と同様の社会的ニーズが再び訪れる場合と、別の要因によりプロジェクトが一時的に棚上げされ、その後再開される場合に大別されます。
##### 1. 同じニーズに再び直面する
このケースは、選挙関連のプロジェクトでよく見られます。選挙は周期的な社会活動で、たとえば台湾では4年ごとに総統、県および市の首長、国会議員、県や市の議員選挙が行われます。選挙期間中、g0vコミュニティでは前回の選挙関連のプロジェクトを開始または再開する貢献者がいます。過去の経験やユーザーのフィードバックに基づいて、プロジェクトの結果をより有用なものにするために、新しいプロジェクト機能をさらに改善および追加します。
##### 2. プロジェクトは一時停止され、その後再開されます
もう一つが、プロジェクトの開始者が何らかの理由でプロジェクトを一時停止し、後でプロジェクトを再開したり、元々の開始者が個人的な理由でプロジェクトを一時停止または離脱する必要があるような状況から、後は他の人々がプロジェクトを担うといったケースです。プロジェクトに興味のある人は、前の人々が残した開発や議論のプロセス、ソースコードなどのオープンデータを介してコラボレーションを引き継ぎながらプロジェクトを再開することができます。
#### 🔶 プロジェクトの再現
プロジェクトの再現(fork)は、プロジェクト全体を直接他の場面に移して利用する場合と、同じ機能を必要とする他のプロジェクトでソースコードなどの一部分を適用する場合などに大別されます。
##### 1. プロジェクト全体を複製する
最初のケースでは「Cofacts 真的假的」を例に挙げます。これは偽情報を確認し、真偽を明らかにするプロジェクトであり、同様に偽情報の問題を抱えている他の国や地域がプロジェクトの運用モデルとソースコードを複製して使用できるようにオープンソース化されています。タイの「Cofacts 真的假的」は実際にそのようにして複製されたプロジェクトです。
##### 2. プロジェクトを部分的に再現する
もう一つのケースでは、「Disfactory」を例に挙げます。「Disfactory」は、農地における違法工場の報告に関するプロジェクトで、人々が写真や地理データをアップロードすることで農地における違法工場の位置を報告し、ダブルチェック後にそれらの情報を政府機関に提出できるプラットフォームを開発しています。
g0vで立ち上がった別のプロジェクト「OH!SHOWN 台湾ツキノワグマ(台湾黒熊)目撃情報および足跡報告プラットフォーム」では、人々が台湾固有種・絶滅危惧種に指定されているツキノワグマの目撃情報や足跡を報告することで、その保護や研究、民衆との衝突リスクが回避できるようにしたいという目的で、写真や地理情報のアップロード機能を必要としていました。そこで「Disfactory」のソースコードをコピーし、ツキノワグマ報告システムを開発しました。
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### 五、プロジェクトに関するよくある質問
#### 1. 新しいプロジェクトを開始した後、提案書のテンプレートを完成させ、プロジェクトの目標を確認する以外に、優先的に取り組む必要がある事項は何ですか?
- プロジェクトのアイデアを提案し、作業の方向性を見つけたら、まず、短期的に実現可能なタスクをリストアップしてみましょう。また、コラボレーションツールや共同編集ツールを上手に活用して、ドキュメントをさまざまなコミュニティに公開します。 g0vコミュニティでは、Slackチャンネルでの共有に加え、隔月で開催されるハッカソンに参加したり、提案したり、現場にいる参加者と話し合ったり、興味のある参加者を募ったりすることもできます。現段階で実現可能な作業目標をたとえば短期と中長期に実現可能という見方で分類し、短期的に皆が実現したいと思っていることを洗い出すこともできます。
#### 2. 長期プロジェクトにはどのような要素が必要ですか?
- まず、コアになるワーキンググループを設立し、相互議論のためのプライベートチャンネルまたはコミュニケーションツール、および電子メールやグループなど、外部とのコミュニケーション方法をセットアップします。また、ハッカソンや定例のミートアップ、講演会などの公開イベントを活用し、外部と連携してプロジェクトの推進を図ります。
- 第二に、会計上の収支、プロジェクトの進捗管理や分業などを含めた協業体制を確立する必要があります。もしオープンソースのコミュニティを運営したい場合は、内部ガバナンスの基礎と対外的な代表や原則を確立する必要があります。たとえば「リスク防止メカニズム」では、誤って成果を削除した場合、個人情報の漏洩、代表者が一般の人々を混乱させた場合、寄付金集めのための口座などの違反に対する責任を定めています。
#### 3. なぜプロジェクトをオープンソースにする必要があるのか?
* ほとんどのプロジェクトが非同期でコラボレーションしていることを考えると、現在の進捗状況や引き継ぎ方をお互いが瞬時に把握したり、毎回のプロジェクト会議に参加できない参加者や新規参加者が話し合いの結果をスムーズにフォローできるようにするために、会議での議論内容、コラボレーションのプロセス、ソースコードなどをオープンにする必要があります。さらに、プロジェクトがオープンソース化されている場合、他の人からフィードバックを受け取るだけでなく、事例として使われたり、同様のニーズを持つ他のプロジェクトの参照テンプレートとして活用することもできます。
* g0vのプロジェクト「中央政府の総予算視覚化」を例にすると、複雑な予算データが読みやすいビジュアルに変換された上で、プロジェクトのソースコードがオープンソース化されたことで、その後「台北市2016年度予算視覚化」が作られました。