--- title: 3-2 g0vのシビックテックプロジェクト案 |g0v シビックテックプロジェクトとコミュニティの手引き|g0v Civic Tech Project & Community Handbook tags: jothon, NDI --- :::success :book: Return to the homepage of the handbook: https://g0v.hackmd.io/@jothon/ctpbook_jp "g0v シビックテックプロジェクトとコミュニティの手引き" is licensed under CC BY-NC. ::: # 3-2 g0vのシビックテックプロジェクト|g0v シビックテックプロジェクトとコミュニティの手引き|g0v Civic Tech Project & Community Handbook ### Chapter 3: プロジェクトの立ち上げ ## 3-2 g0vのシビックテックプロジェクト ### 中央政府の総予算視覚化 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_1c854ed70cc249dd8ef1f704f629f774.png) > Image from [中央政府の総予算視覚化](https://budget.g0v.tw/) 「[中央政府の総予算視覚化](https://budget.g0v.tw/)」は、g0vで生まれた初めてのプロジェクトであり、大量の難解な予算データを使用して、鳥瞰図、推移図(樹形図やバブル図を含む)、国債時計など、インタラクティブに視覚化しました。中央政府の各省庁の予算を比較しながら表示しており、過去の傾向、省庁間の比較、税金の内訳までを表示できます。ユーザーが予算の値をよりよく理解できるように、予算額をニュー台湾ドルで表示するだけでなく、タピオカミルクティー何杯分、ルーローハン(滷肉飯)何杯分など、親しみやすい単位に換算されています。さらに、プロジェクトの公式Webサイトには、ユーザーが予算配分に対する考え方やフィードバックなどのコメントを残せるようにして、市民たちが政府の予算計画を監督する力を高めることができるようなフィードバック体制も設けられています。 このプロジェクトは2012年に「Yahoo! Open Hack Day」で賞を獲得しました。メンバーはその賞金を使ってg0vの第0回ハッカソンを開催し、「プログラムを書いて社会を変える」をスローガンに、g0vで一連のオープンデータアクションを開始しました。2015年、台北市政府は民間と協力し、オープンソースの「中央政府の総予算視覚化」ソースコードを活用しながら2016年度予算の視覚化を行いました。ここでも市民たちが予算配分について意見を表明し、議論に参加できるようにするフィードバック体制が設けられています。 g0vの多くのプロジェクトは、オープンソースの精神に基づいて「政府に採用されるのを待つ」といったコンセプトで先行公開されています。これはさまざまな政府組織がそれらを有効に活用し、民間と政府が双方向のつながりを確立することを期待してのことです。政府に技術指導を行うg0vの貢献者達が、g0vで使われているデジタルツールやコラボレーションの概念を政府内に導入したり、g0vの活動に積極的に参加する公務員の存在が、官民のコラボレーションの可能性を広げています。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_c3d9e9edb83b6e6c8606cf09fdaac441.png) ### 政治献金のオープン化 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_73559f4da28b11205fbb3c985731bcfb.jpg) > Image from Mirror Media & g0v > 以前、台湾の政治献金情報は監察院の一部のコンピューターに保存されていて、閲覧するには現場まで行って申請する必要があり、データを持ち出すことができなかったため、市民は分析や監視ができませんでした。 2014年のひまわり学生運動の後、g0v 8回目のハッカソン「戒厳令解除ハッカソン」で、g0vのベテラン貢献者のRonnyが「[政治献金のオープン化プロジェクト](https://g0v.hackmd.io/@hackpad-importer/SJTN3Yts8X)」を立ち上げました。OCRの文字識別技術を通し、約10,000人近くの市民たちが24時間以内に30万ほどのデータの識別を完了し、7名の政治家の政治献金データをすべてデジタル化しました。「キーボードがあれば国を救える」という精神のもと、貢献者たちは台湾のオープンソースコミュニティ史上に残る大規模なクラウドアウトソーシング業務を完了させたのです。 しかし、これら7名分の政治献金に関するデータは、政界とビジネス界の資金の流れの関係を把握するには十分な量ではありません。 2017年、台湾のマスメディア『ミラーメディア 鏡週刊』のチームはg0vと協力して「政治献金のオープン化プロジェクト」を再開し、監察院から第9期(2016年)立法議員(国会議員に相当)候補者の政治献金寄付口座の情報を紙に印刷し、再び市民らの参加を呼びかけました。ボランティア参加者達の手作業による入力と校正を経て、合計 200名を超える議員立候補者の政治献金データがデジタル化されて公開されました。公開されたオープンデータはさまざまなメディアや研究者も利用可能となり、応用や分析の基礎となりました。 2017年、立法院では「政治献金法」の一部条文の改正案が第3読会を通過し、将来的には政治献金の詳細をオンラインで公開することが明記されました。2019年には管轄機関である監察院が立ち上げた「政治献金公開リファレンスプラットフォーム」が正式にリリースされました。これは実際に民衆らの協業のエネルギーが発揮され、オープンデータが民主主義の発展と政府の監督に効果を発揮した事例です。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_22cf4fc1c3bca63ad1762bf08f7ce4e8.png) ### 「投票ガイド」と「選挙前の総まとめ」 台湾では4年ごとに総統、県・市の首長、立法委員(国会議員に相当)、県・市の議員選挙が行われますが、多くの有権者は投票前日まで候補者のことをよく知らず、中には自分が投票する地域にどのような候補者がいるのかすら分からない人もいます。そこでg0vの貢献者らは「投票指南(投票ガイドといった意味)」と題し、すべての候補者の政治献金、政見、出自、財産申告、さらには過去の予算の増減、自治体で行ってきた政策、質問への回答や議会の出席欠席記録、過去の選挙における政見などをすべてWebサイト上で公開しました。有権者が投票する際により迷わず、無力感を感じることなく、分別のある思考で盲目的に投票することのないようにというのがこのプロジェクトの目指すところです。 Webサイト上で候補者の政治履歴を提供することに加えて、ユーザーからの意見やフィードバックを収集し、プラットフォームの機能を強化および改善することで、より完全かつ中立的に情報を開示できるようにしました。2020年からは、他のg0v貢献者が「選前大補帖(選挙前の総まとめといった意味)」を開始し、終了した「投票指南(投票ガイド)」の精神を継承しながら、有権者が懸念している問題に関連する議員たちが立法した法案を参照できるように「法案」をテーマにしたデータを追加しました。自分が関心のある議題と議員が提案する法案を比較することで、候補者や政党を合理的に判断し、貴重な一票を投じられるようにしたものです。 ### 「高雄ガス爆発事故」共同執筆 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_e8e0652daba0275738d673d2f23f7e51.jpeg) > Image from [g0v.tw Facebook 粉絲專頁](https://www.facebook.com/g0v.tw/photos/a.456791061028852/760629823978306/?type=3&paipv=0&eav=AfYOW2EOLBxuhQKrxr4qQWl_6JIes2lnbftPPOeOcVoq-0GtaGst-Lsoz_Oi54OXb2s&_rdr) 2014年、高雄市で一連の石油化学ガス爆発が発生し、32人が死亡、321人が負傷し、多くの道路区間が破壊されました。事故発生後、メディアや現場の情報は混乱し、インターネット上には誤った、あるいは誤解を招く発言や情報も数多くありました。最新の状況を提供し、民衆が危険な地域に迷い込んだり、真偽が疑わしい情報を誤解しないよう、すぐにg0vの有志らが災害救助地図、災害救助情報、関連火災情報を含む「高雄ガス爆発事故の総まとめ」を作成しました。警報レポート、最新情報と各種需要のリスト、時系列の図表、医療および死傷者情報、各種電話から「1991」に電話して伝言を残すことができる災害伝言ダイヤルプラットフォーム、消防の連絡先、避難所の現状、各種専門ボランティアと支援物資のニーズと募集、被災者向けの無料宿泊所、政府発信情報のまとめ、インフラの修復状況、災害後の支援策、報道のリスト、映像記録、尋ね人専門の情報欄、そしてネットユーザーらが継続的にアップロードする最新レポートも掲載されました。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_1542d59e622bd2491d2f998ae998a8a3.png) > Image from [g0v.tw Facebook 粉絲專頁](https://www.facebook.com/g0v.tw/photos/a.456791061028852/765654313475857) 「高雄ガス爆発事故の総まとめ」の作成に加え、医療のバックグラウンドを持つ g0vの参加者達は「全国重症救急担当病院 - 救急医療リアルタイム情報」を立ち上げ、オープンデータの収集を開始しました。g0vの7人の貢献者達は、Webサイト上のデータを共通のオープンデータ形式に変換する30個のプログラムを8時間で作り上げ、それを使ってリアルタイムで視覚的に分かりやすいグラフが更新される「全国救急医療リアルタイムダッシュボード」を作りました。全国31の重症救急病院からのリアルタイム情報を集計したグラフデータで、病院の種類や病院別の入院待機者数、集中治療室数、ストレッチャー数、満床通知情報などを表示できます。 これを見ることで各病院の救急病床が満床になる時間や頻度を把握することができるため、出動時の救急車の役にも立ちます。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_64f0cdd6ad0bf82e0cc56d18da6cc118.png) ### マスクマップ ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_6cd6dbac2ce2f26a96ce8652c78f31cf.jpeg) > Image from [g0v.tw Facebook 粉絲專頁](https://www.facebook.com/g0v.tw/posts/3580268872014373/?locale=zh_CN) 2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界中で広がり始め、医療用マスクの需要が急速に増加しました。台湾各地のコンビニでのマスクの在庫は不明で、人々は各々が一軒一軒回って探してみるしかなく、時間も体力もかかっていました。g0vのパートナー「好想工作室」のエンジニアHowardは、皆の時間を節約するために「コンビニにおけるマスクの販売情報マップ」を開発しました。2 月2日の公開後、このマスクマップのトラフィックは瞬時に爆発的に増加し、HowardはGoogleから最大60万ニュー台湾ドルの請求書を受け取りました。 この情報はg0vのコミュニティでもリアルタイムで伝わっており、Slackでディスカッションが開始されると、即座に数百人のg0v貢献者が討論に加入しました。当時デジタル担当大臣だったg0vのオードリー・タンのサポートにより、政府は薬局の医療用マスクのリアルタイムな在庫データを公開してくれたおかげで、g0vと政府のリソースがスムーズに統合され、台湾最大の“マスクハッカソン”がオンラインで開始されました。多くのg0v貢献者たち連日連夜取り組み、衛生福利部中央健康保健署のAPI は72時間以内にフロント・バックエンドを構成し、累計数万回のバージョンを更新しながらマスク情報と地図のプロトタイプをオープンソースで公開し、2月6日に「薬局の医療用マスクマップ」をローンチしました。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_78b0e8f242dace9c36940a79948cfacc.png) ### Cofacts 真的假的 デジタルデータがあふれるこの時代、メディア利用におけるリテラシーはとても重要です。g0vの貢献者MrOrzは、インターネット初心者やインターネット検索に慣れていない多くの人々にとって、「検索キーワードを選定し、Googleを開き、検索窓にキーワードを入力する」ことは、決して簡単ではありません。さらに、LINEではメッセージの転送が比較的簡単にできるため、LINEは偽情報を拡散する経路の一つになっていました。そこでMrOrzは、LINE bot:[@cofacts](https://line.me/R/ti/p/%40cofacts) を作成し、疑わしいメッセージをこのアカウントに転送すると、それがフェイクであるかどうかの検証結果を返してくれたり、疑わしい情報を通報できるようにしました。 @cofacts のレビュー応答は、「ユーザーによって報告された疑わしいメッセージ」と「編集者グループからの応答」によって構成される強力なデータベースに基付いています。ユーザーが投稿した情報がデータベース上に見当たらないない場合、ユーザーは @cofacts を通じてデータベースに情報を送信でき、その情報は[Cofactsの公式Webサイト](https://cofacts.tw/)に表示されます。それを見た編集者グループが新たに寄せられた情報のファクトチェック作業を行い、それ以降寄せられた問い合わせに対する@cofacts 応答の基礎にすることができます。 「Cofacts 真的假的」には固定の編集者グループが存在せず、すべてのレビュー回答は熱心な市民の協力によって行われているため、事実か虚偽かが分からないあらゆる情報は、共同の努力によって慎重にレビューされ、チェックされ、議論されます。2016年に「Cofacts 真的假的」プロジェクトが設立されて以来、公式Webサイトは毎年数千万のビューを獲得し、@cofactsは年間約20万回の自動返信を行い、年間15,000件の新規返信が行われています。「Cofacts 真的假的」では、「一緒に働く」「情報を見つける、問題について話し合う」「インスピレーションや助けを求める」を主題として、2 か月ごとに編集者のミートアップやボランティア研修を実施しており、プロジェクトの貢献者や貢献の初心者らがシステムに慣れ、お互いを知り、コミュニケーションを図れるようにしています。 「Cofacts 真的假的」の歴代のプログラム、会議記録やデータなどのアウトプットはすべてオープンかつ透明で、無料で公開されており、皆で協力して、さまざまな可能性を創造していくことを奨励しています。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_71275792d3da754ea334a93ac7267cc7.png) ### Disfactory 農地違法工場 台湾では、農地に違法に工場が建設されるという状況が長年続いていますが、地方自治体にはそれを積極的に調査する余力がなく、市民たちの自発的な通報に頼っていました。しかし農地は広大で、違法に建設された工場も数多く存在するため、「地球公民基金会」は2019年7月のg0vハッカソンで、より便利な通報システムを築くというプロジェクトを提案しました。「地球公民基金会」にはデジタル製品を開発する技術がないため、彼らはg0vハッカソンでエンジニア、プログラマー、地理情報システムのプロジェクトマネージャーを募集し、不法な農地工場建設を匿名で通報できる「[農地違法工場報告システム](https://disfactory.tw/)」をg0vと共同で開発しました。集められた情報は、g0vの「Disfactory」チームがダブルチェックを行った上で政府機関に提出することで、通報が発覚した場合の報復を恐れる民衆たちの心理的な負担を軽減することができます。2023年9月の時点で、公式サイトの報告システムには6,085件の通報と755件の上訴文書が蓄積され、507の違法工場に罰金が科せられました。 プロジェクトの設立以来、Disfactoryのミーティングは毎週または隔週で開催されています。[g0vのHackMD](https://g0v.hackmd.io/@disfactory/home)ですべての会議やハッカソンの提案内容が公開されているほか、g0v Slack にも専用のパブリックチャンネルが存在しています。(現在、このチャンネルには 270 名を超えるメンバーがいます)。さまざまな形ですべてのg0v参加者がDisfactoryのプロジェクトに参加できるよう、快適でオープンな協業環境を確立しています。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_4172fb2379ce27f8d6dd107f6bf1bb3c.jpg) > Image from [大家來找廠](https://spot.disfactory.tw/) 2022 年、Disfactoryはゲーミフィケーションの手法で市民たちが2017年と2020年の台湾農業委員会所有の衛星航空写真を比較できるようにした「[大家來找廠](https://spot.disfactory.tw/)(皆で工場を探そう、といった意味)」を公開しました。参加ハードルが低く、デジタルインクルーシブ性が高いゲーム的なアプローチは、社会をテーマにした教材として学生たちに参加を促しました。2023年9月までに8,000人近いユーザーが参加し、6,000以上の写真を識別したこのプロジェクトは、監察院からも注目され、経済部(経済産業省に相当)の管理下に置くよう要請されました。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_715b841219bae8c6e936ce3ee5d46160.png) ### 辞典プロジェクト #### 萌典 Moe dict 「萌典 Moe dict」は、教育部(文部科学省に相当)の国語辞典の進化版で、中華民国の国語が合計16万項目、台湾閩南語が2万項目、台湾客家語が1万4千項目掲載されています。書き順、発音などの機能だけでなく、英語、フランス語、ドイツ語にも翻訳することができます。オープンコラボレーションの精神に基づき、iOS、Android、デスクトップアプリケーション版に応用開発されました。台湾原住民(日本の先住民に相当)の一つアミ族の「アミ語辞典」、「iTaigi 愛台湾語」などのサブプロジェクトにも派生し、小型ハッカソン「萌典松」はこれまでに合計24 回開催されています。 「萌典 Moe dict」のオリジナルデータソースは、教育部が著作権を所有する「重編国語辞典」改訂版、「台湾閩南語常用語辞典」、「台湾客家常用語辞典」、「常用漢字標準字書き順学習サイト」「国語辞典簡編本」があります。また、CC-CEDict、CFDict、HanDeDict、中華文化総会が提供する両岸辞典、中華文化総会のWebサイトにリンクされた埋め込みページを通じ、歴代の書体が掲載されています。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_b40f2b50c9bb4eab60360f7386a8da14.png) #### アミ語辞典 「アミ語辞典」は、「萌典 Moe dict」から派生したプロジェクトで、台湾原住民語の一つであるアミ語のクエリを提供し、アミ語の使用を促進および強化し、本来の意味を維持しようという取り組みです。台湾原住民族の言語における豊かな文化的内包が保存されることで、一定の言語保護が行われ、多様で開かれた民族言語の学習空間が構築されることが期待されています。現在、「アミ語辞典」のWebサイトは更新中です。スマートフォンアプリでは、オフラインで動かせるよう辞典を端末にダウンロードできるようにすることで、台湾原住民族が暮らす地域の通信ネットワークが不安定であるような状況にも対策が取られています。 このプロジェクトは、台湾聖書協会から提供された宣教師の方敏英が編さんしたアミ語辞典をデジタル化するために始まりました。大量の項目をより詳細なタスクに分割してクラウドアウトソーシングで広く協力を募り、53時間で4,855項目のエントリが特定されました。 このプロジェクトのデータソースには、方敏英が編さんしたアミ族辞典に加えて、蔡中涵博士がg0v及び「萌典 Moe dict」に無料で使用できるように提供した自身のアミ語辞典、およびパリ外国宣教会のLouis Pourrias神父とMaurice Poinsot神父が編さんしたアミ語辞典(フランス語とアミ語、漢語辞典)も含まれています。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_1cf91c37e2a124ecfc3ef181056974aa.png) #### iTaigi 愛台湾語 「iTaigi 愛台湾語」では、ユーザーが台湾語辞書の編集に参加でき、台湾華語の語彙、台湾閩南語のローマ字と台湾語の発音が提供され、ユーザーは「これは良い言い方です」「おかしいです」と投票することができます。投票結果に応じて語彙の順序が表示され、ユーザーは参考と選択が可能になります。既存の発音以外に、ユーザーは語彙や台湾語の漢字やローマ字を追加することもできます。 ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_9dd12fa219018e42f0e303daba78d8bb.png) ### 零時小学校(Sch001) 零時小学校は、2019年に運営チーム「揪松団(jothon)」が始めた教育プロジェクトで、2020年に正式にスタートしました。教育を表す「School」に、デジタルネイティブ世代を表す0と1を入れ、“学校をゼロから見直す”という意味や、教育とデジタルコミュニティ間の接続とコラボレーションを意味しています。零時小学校は、デジタルシティズンシップリテラシーの促進に取り組んでおり、レッスンの設計、キャンプやプロジェクトコンテストの開催、高校や大学とコラボレーションした授業や研修を通じて、g0vコミュニティのシビックテックで採用されている協業の心構えやそのモデル、経験、技術を共有したいと考えています。より多くの人々がシビックテックコミュニティに参加し、学校の枠を超えて誰もが自発的に連携し、行動で社会を変えることのできるような「自立×協働×越境×アクション」のプロジェクトが教育現場で起こることを推進します。 三年間の実践の中で、零時小学校はg0vコミュニティと協力して65を超えるデジタルシチズンシップオープンレッスンを提供し、13回の講座や読書会、3回のデジタルシチズンシップエンパワーメントキャンプ、3回のプロジェクト育成コンテスト、2回の教師研修を開催しました。8つの学校で開催された講座には、学生、教師、一般などあらゆる立場から約2,000人が参加しました。参加者たちは合計100件のシビックテックプロジェクトを生み出し、驚くべきことに、そのうち63件は高校生と大学生からの応募でした。プロジェクトは多岐にわたり、農村教育、学習リソースの統合と共有、ローカライズされたコース、教育データベースの構築、高校生の学問的や人間関係、教師の協業、歩行者の平等などがあります。 学校との連携講座では、シビックテックプロジェクトの実施を目指し、学校の教師らと連携して準備を進めます。基本的な講座には、g0vにおけるコラボレーションの考え方、プロジェクトの経験の共有、デジタルツールの指導、プロジェクトの構造と指導が含まれます。講座の具体的な内容は教育目標に基付いて調整され、たとえば台中女子高等学校の場合はメディアリテラシーを切り口に実施し、放伴教育協会や「Cofacts 真的假的」、台湾情報環境研究センターを招き、市民の力をどのように運用するかを、異なる立場で偽情報を解決するところから共有しました。学生により近い生活や社会の問題から始めて、徐々にITを利用して社会に影響を与えるプロジェクトに発展させて指導します。国立台湾大学の情報工程学学部とインターネット及びマルチメディア研究所との講座では、「Web3 for Social Good」をテーマに、Web3の実践者を招いてさまざまな分野の Web3アプリケーションや技術を共有し、学生には学期末にこのテーマに基づいた提案を行ってもらいました。このコースは学校の教師と学生の合意に基付き動画が撮影され、g0vのYouTubeチャンネルで公開され、誰でも学習に利用できるようにしてあります。 上記のような学校との協業に加えて、零時小学校はオープンソースの概念、デジタルコラボレーションツール、シビックテックプロジェクトの経験や関連ツールの応用、テクノロジートレンドなどのトピックに関するデジタル市民レッスンの動画を制作し、毎年夏休み中に開催する1〜1ヶ月半ほどのキャンプを開催し、誰もが自主学習できるようにしています。また、コミュニティに参加して講師やg0vの貢献者達と交流し、ハッカソンを卒業式のように捉えて参加することで、学生たちがハッカソンでプロジェクトを提案する際にシビックテックをより深く理解し、学んだことをプロジェクトに応用することができるようにします。キャンプ終了後、零時小学校は「プロジェクト育成コンテスト」を開催します。これにより、コースに参加するすべての人、および現在の生活や社会的ニーズを解決したい人は誰でも、自分のアイデアをプロジェクトとして提案することで、賛同を得られるだけでなく、1対1のコーチング、提案を最適化するワークショップ、リソースマッチング、選考および最終選考時の賞金といった複数のサポートを受けることができます。また、予備選考から最終選考まで、ベテランの審査員がフィードバックを提供してくれます。零時小学校は、プロジェクトを継続的に最適化するチームにさまざまなサポートを提供して、誰もが地域で自発的に協力し、社会を変える行動を起こすことができるようにしたいと考えています。 * 零時小学校オフィシャルサイト:https://sch001.g0v.tw/ * 零時小学校コラボレーションレッスンの紹介:https://g0v.hackmd.io/@jothon/sch001pr0jectcourseplan ![](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/g0v-hackmd-images/uploads/upload_11ef86c9bcdb2aad384a25047e5fcc19.png)